医学教育センターの機能と役割

当医学教育センターは“医学分野で協働する医療人を養成すること”を目的として、平成24年に設置されました。医学部附属センターの名称を冠されていますが、実際には医学部の中でも医学科における教育のみを対象として、基礎系、臨床系、社会医学系の各教員によって行われる医学教育を支援する役割を担っています。

当センターの業務はひとことで言うと、教育活動の支援です。医学部での教育は、基礎系、臨床系、社会医学系の多数の教員によって行われるものであり、センターでは、これらの教育活動が円滑に行われるよう、“縁の下の力持ち”として教育をサポートし、よりよい教育が実践されるよう、さまざまな教育支援を行っています。

現在は、医学教育カリキュラムの開発・実施・点検評価及び改善を主たる業務とし、その他、臨床実習教育の整備、共用試験の施行・運営、医学科教員に対するファカルティディベロップメント(FD)活動、学生の学習上の悩み・問題に関する相談、医学教育に関する学術研究などを行っています。

1) 医学教育カリキュラムの開発・実施・点検評価及び改善

日本における医学教育は長年にわたり、日本独特の講座制の枠内で、各講座がそれぞれの専門分野の教育を行うことによって成り立ってきました。しかしこれでは、卒業までに結局どのような知識・技能などが身に付くのか、卒業時の全体像を見ることができませんでした。

医学部では、領域を超えた幅広い知識や医師としての基本的な診療技能を身につける必要があり、近年では、医師としてのヒューマニズムやプロフェッショナリズム教育も重視されるようになっています。これらについて、漏れなく十分な教育を行うためには、まず卒業の時点でどのような知識・技能等を修得していることを目指すのか(アウトカム)を明確に定めた上で、それを修得できるように6年間の教育を一元的に計画する必要があります。教員数や授業時間などの教育資源には限りがあり、効果的・効率的に教育を行うためには、医学教育の全体像を見渡しながらこれらの教育資源を有効に配分することが重要です。

医学教育センターでは、卒業までに達成すべき学習目標の明確化を進めており、効率的・効果的な教育手法の開発にも取り組んでいます。また、現在行われている教育の問題点を明らかにしたうえで、改善していく作業も行っています。

2) 臨床実習教育の整備

医学部では「コアカリキュラムなどに則した体系的で質の高い臨床実習教育を整備し、先端医療や地域医療の実践に即応できる医学生を輩出する」という目標を掲げています。近年では、医学部の臨床実習において診療参加型実習の導入が進められており、広島大学でも、段階的に導入されつつあります。

医学教育センターでは、実習がより充実したものとなるよう臨床実習の改善に取り組んでおり、学生用カルテの整備やポートフォリオの導入を進め、実習内容の充実に努めています。また、学外実習機関との調整なども行っています。また、実習成果の評価法として、卒業OSCEの改善にも取り組んでいます。

3) 共用試験の施行・運営

共用試験とは、臨床実習の開始に先立ち全国の医学部で行われる評価試験で、知識を評価するコンピュータ客観試験(Computer Based Testing: CBT)と、診療技能を評価する客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination: OSCE)からなります。医学教育センターでは、これらの試験の実務的な施行・運営を行っています。

4) 医学科教員に対するファカルティディベロップメント(FD)活動

ファカルティディベロップメント(FD)とは、「教員の教育能力を高めるための実践的な研修」のことであり、医学教育センターでは医学科の教員を対象として、年に数回のペースで開催しています。

5) 学生の学習支援

学習上の悩みを抱えている学生は思いのほか多く、効果的な学習方法を身につけていないために学習上苦労している学生も多いのが実情です。医学教育センターでは、学生の学習支援の一環として、学習上の問題や悩みに関する相談を行っており、より効果的な学習方法の指導等も行っています。

6) 医学教育に関する学術研究

医学教育全般に関する学術研究を行っています。現在は、eラーニング教材の研究・開発、医学教育におけるテュートリアルの応用、臨床実習における診療技能の評価法、学修成果基盤型教育の手法などの研究を行っています。

7) その他

平成25年度より、医学部教育に対する国際認証制度が始まりました。広島大学でもこの認証に対応すべく、現在学内の体制整備を進めているところです。医学教育センターでは、認証の基準となるグローバルスタンダードの内容を検討し、教育に関する学内の体制整備を推進しています。

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